日経CNBCブログ Caster's Voice

2010.07.21 (Wed) 後藤 浩祐

ソロス・チャートが問う「通貨の番人」日銀の円高対応

足元の経済指標の悪化や株安を受け、アメリカのマーケットも、日本のマーケットも、当局の追加の金融緩和を期待する「催促相場」と化してきています。

金融緩和についていえば、サブプライム危機後、震源地のアメリカの方が日本よりも懸命に行ってきました。FRBは住宅ローン担保証券(MBS)や長期国債の買い入れを積極的に行いました。

アメリカと日本のこれまでの危機対応策を考えるうえで、マネタリーベース(通貨供給量)が参考になります。

リーマンショック前の2008年7月には、アメリカのマネタリーベースは89兆円、日本は87兆円とほぼ同じ額でした。

mane1
しかし、リーマンショック後は、アメリカはマネタリーベースを一気に増やし、先月6月時点では、182兆円にまで及んでいます。一方、日本は97兆円にとどまっています。つまり、この2年間で、アメリカは100兆円近くマネタリーベースを増やしてきたのに対し、日本は10兆円しか上積みしてません。

この日米の極端なマネタリーベースの伸びの違いが、昨今の円高・ドル安の一因になっている、とみています。よくFRBがとっている姿勢は、空からお金をバラバラとばら撒く「ヘリコプターマネー」と呼ばれます。ヘリコプターとまではいかないまでも、アメリカが大きなバケツでドル札をマーケットにばら撒いているとしたら、日本は小さなコップで円の新札をちょびちょびとばら撒いているような感じです。

現在のように、日本とアメリカの金利差が極端に縮まってくると、通貨の供給量が為替相場に及ぼす影響はかなり高まっている、と考えられます。

著名投資家のジョージ・ソロスさんも、お金の供給量と為替相場にはある程度の相関関係があることに着目し、「ソロス・チャート」というテクニカルチャートを発明しました。

mane2
左目盛にドル円のレート、右目盛に日本とアメリカのマネタリーベースの比率、つまり、日本のマネタリーベース/アメリカのマネタリーベースを記しています。

相対的にアメリカの方が、日本よりも、通貨供給量をぐっと増やしていることから、比率を示す青い線が急激に下がっています。これに伴って、ドル円も円高になってきている面があります。

輸出立国の日本にとって、行き過ぎた円高は、製品の高価格化で国際的な価格競争力を削ぎ、企業の収益を損ないます。海外で汗水たらしてせっかく稼いだ外貨も、外貨安・円高のため、円転した際に目減りしてしまいます。

日本の「通貨の番人」日銀がマネタリーベースを増やして、直接的にも、間接的にも、円高を阻止できる施策の余地は、アメリカに比べて、まだまだあると思われます。

 

タグ: ,